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もうひとつの表紙は綾波レイ(無料)

HMVの店内で配布している無料の雑誌「HMV the music & master」の最新号が届いた。

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2つほど、CDのレビューを書いているのだけれど、表紙の一方は、いま話題のPerfume、もういっぽうはアニメの綾波レイ。

こういう表紙につられて、この冊子を手にとって、パラパラとめくっていると、いきなりジャズのページなんかがでてきて、私のヘンテコな文章にぶつかる。そこで興味を持ってくれる人に聴いてもらえればいい、というのが、ジャズのスタンスなのだろうか。

いや、疑問を抱いているのではなくて、相手が見えないだけ。でも、相手が見えない仕事というのも、そのつもりで文章を考えれば、おもしろい――、と思ってやっているのだけれど。
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生きるための批評

「本の雑誌」2008年1月号に、穂村弘氏の含蓄深い文章があったので、勝手に引用させていただく。

●続・棒パン日常 言語感覚・その3 =穂村 弘

 「生きる」ための言葉である詩を包み込むように、沢山の「生き延びる」ための言葉たちがある。例えば、新聞記事。詩人でもある新聞記者が、記事を書く際に独創的な比喩や新鮮なオノマトペを思いついたらどうするだろう。自らの手で封印するのではないか。新聞記事の中で使用されるのは見慣れた比喩や決まりもののオノマトペ、すなわち一度死んだ言葉でなくてはまずいのだ。多義的で瑞々しい意外性を含んだ表現は、「生き延びる」ために必要な情報の伝達を邪魔してしまう。「のをあある とをあある やわあ」と遠吠えする犬なんてそこではあり得ない。
 私たちがそろって安全に「生き延びる」ためには、新聞の記事に限らず多くの場面で言葉を殺す必要がある。殺し方のルールとしては「5W1Hをはっきりさせろ」とか、「結論から述べよ」とか、「空気を読め」(これ自体は意外性のある詩的な表現だが)とか。学校教育や社員研修や飲み会の席で、我々はこれらのルールを学び続ける。全ては「生き延びる」という大目的に向かって言葉をツール化するためだ。
 また「生き延びる」ための効率上、「次の一瞬にまったく無根拠な詩に見舞われる可能性」などは丁寧に隠蔽される必要がある。今まさに死に直面した人間の目に映る一万円札はただの紙切れだが、全ての人間がその目をもっていては社会が成立しない。お金はちゃんとお金にみえないと困るのだ。
 というわけで、生に対して本質的に唯一の未知性である死の匂いを忘れた人間の言葉からは意外性が消える。死から遠ざかることで詩からも遠ざかるわけだ。そんな私たちは意外な言葉に出会うと不安になってしまう。死の匂いを嗅がされた気がするから。その不安を忘れるために『今すぐ全てがうまくいく方法』という本を読むことにする。まずは「生き延びる」ことだ。「生きる」のは明日でいい。こうして「生きる」は一日ずつ後ろにずれてゆく。
 「生き延びる」ためのルールの厳密さに圧倒され続ける私たちは、恋愛、旅行、映画、ギャンブルなどの「安全で小さな死」を強く求める。搭乗時刻を待ちながら入った空港の本屋では、ふと思いついて『夢十夜』を手にとってみる。「生き延びる」強制力が弱まる旅先で少しだけ「生きる」つもりなのだ。
 このように「生きる」/「生き延びる」の二重性を帯びた我々の言葉は常に引き裂かれている。つまり、私たちの全員が「詩人でもある新聞記者」なのだ。だが、新聞記者を定年退職してから思う存分詩を書こうという考えは虚しい。「生き延びる」ことを定年退職したときには、もう死んでいるからである。

 間断なく祝福せよ楓の樹にのぼらんとする水牛を!
  「馥郁タル火夫」(西脇順三郎)
                              出典:「本の雑誌」2008年1月号



このところ自分がやるべきことについて考えていたことに、かなり示唆を与えてくれる、とてもありがたい文章だった。

振り替えれば、自分のライターとしての経歴がまさに「生き延びるため」のものにほかならなかったし、どうやって「生きるため」の文章を書くかを考えることが、「生きるため」のモチベーションでもあった。

それは、自分が興味を持って接してきたジャズについても同じだ。そこにも「生きるため」/「生き延びるため」の音楽が混在している。ポップスのように割り切れる部分が多ければまだいいのかもしれないが、芸術性を認める度合いが多いジャズの場合、この二律背反性に大いに悩まされることになることを、目の当たりにしてきた。

大きなテーマとして、心にとめておきたい指摘だ。

注記
のをあある とをあある やわあ=萩原朔太郎の「遺伝」という詩で使われたオノマトペ。 「青猫」(大正12)所収。

テーマ: JAZZ - ジャンル: 音楽

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